Z110117 週刊金融財政事情
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まだ進出していない、今後の成長が見込めるアジア各国に、現地の金融機関との業務提携という形で海外進出していく。たとえば、10年11月にベトナムのバオベトホールディングス、さらにインドのイエス・バンクと業務提携を結んだ。バオベトはベトナム最大手の金融コングロマリットだ。ベトナム進出を考える顧客と同国政府要人の面会を設定したり、工場用地の手配をするなど、顧客のさまざまな要求に応え、当社からも広範な提案をすることができる。ROA2%ROE10%台が目標――株価が長期間低迷しており、公的資金返済のメドが立たない現在の株価では、まだ公的資金返済に向けた絵が描けるような状況にない。まずは第一歩として、3カ年の中期経営計画を全うすることだ。返済までに少し時間を要するのは事実だが、軌道に乗りさえすれば、収益力の多様化・強化のためのさらなるビジネスの種がいろいろと出てくるはずだ。外国人投資家が、いま新生銀行の株式を買う必要性がないと考えるのもわかる。収益性が大手行と同じならば、投資資金は当然メガバンクに向かう。他の大手行のではなく当社の株を投資家に買ってもらうためには、業務内容・人材レベルで他行と差別化し、高い収益性をもつ銀行を作り上げなければならない。ソリューション型のビジネスに力を入れて非金利収入を増やし、近い将来にROA2%、ROE十数%程度の収益性をもった銀行にしたい。それぐらいの利益水準にならなければ、当社は投資家に認めてもらえない。――株価低迷の原因として、子会社アプラスフィナンシャルの株価下落による減損リスクの問題のほか、不動産ノンリコース・ローンの残存リスクなどに対する投資家の懸念があったこのほど、効率的にコンシューマーファイナンス子会社を運営するために、当社が保有するアプラスの普通株を完全子会社の新生フィナンシャルに譲渡した。これによって、11年3月期決算で株式譲渡に伴う特別損失を銀行単体で317億円計上するが、アプラス株の下落による減損リスクはなくなった。海外投資などのノンコア資産については、今後も残高を減少させていく。もともとノンコア資産の残高はピーク時で9000億円あったが6000億円程度を処分可能な資産が占める。そのうち約3000億円は比較的高格付の社債が中心となっており、信用リスクの点からはすぐに売却する必要はない。中期経営計画中に6000億円のノンコア資産を約半分の3000億円に減らすつもりだが、すでに、計画初年度で1300億円程度売却している。不動産のノンリコース・ローンも、要注意先を中心に売却を進めており、計画どおりに減少している。今後、もっと処理を加速させていく。ただし、国内の不動産融資事業については、残高を現在より圧縮したうえで中身を入れ替え安全性を高めながら続けていく。――10年9月期決算が好調だったにもかかわらず、通期業績予想を見直していない。11年3月期決算はどうなるか中間期の連結純利益は169億円だったが、通期の見通しは125億円のまま据え置いた。これはその時点で下期に40億円程度の損失を見込んでいるわけではなく、業務環境に不確定要因が多すぎたためだ。6月の貸金業法改正や、9月の武富士倒産の影響によって、これから連鎖的な貸倒れがどの程度発生するのかわからない。また、中間期決算発表時には、米ドル建て優先出資証券の公開買付け結果も読めなかった。第3四半期の決算発表までには、通期見通しを発表したいと考えている。(聞き手・本誌谷川治生)とうましげき72年東大法学部卒、旧第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。同行常務執行役員、みずほコーポレート銀行常務執行役員、いすゞ自動車副社長などを経て、09年5月新生銀行顧問。6月社長就任。2011.1.17金融財政事情31
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