Z110117 週刊金融財政事情
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本欄は金融界有識者が執筆しています。��「宙蛸」は、とくに深い意味もなくつけた筆名だが、昨年を振り返ると、「宙」と「蛸」にまつわる出来事があった。「宙」については、小惑星探査機「はやぶさ」が数々のトラブルを乗り越え、小惑星「イトカワ」の岩石質微粒子を採取したカプセルを無事地球に送り届けた。こうした活動がふたたび若い世代の宇宙への関心を高め、間接的に将来の先端技術を担う人材を増やすのではないか、と期待される�一方で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の広報施設「JAXAi」(東京・大手町)は昨年末で閉鎖された。筆者はたまたま閉鎖の数日前に訪れたが、子どもたちが輝く目で見学していただけではなく、閉鎖を惜しむ大人の訪問者も多かった。こうした先端宇宙科学への関心を高める施設を閉鎖に追い込んだのは、事業仕分けの「輝かしい成果」である。もちろん財政面での冗費は削るべきだが、先端技術支援に一種の「遊び」は必要だ。他の科学技術予算のみならず、スポーツ関連にまで削減の手を伸ばしたのに、総額では公約倒れに終わった点は「蓮舫仕分けショー」との非難を浴びてもしかたがない�「蛸」については、サッカーワールドカップで、蛸のパウル君が勝敗を正しく予想できた、と話題になった。株価や景気も占ってもらったら、との冗談まで聞かれたが、もちろん蛸が勝敗を正しく予想できる根拠はない�一方、アナリストの評価についても、根拠はともかく結果が当たればそれでよい、との風潮が強い。リーマンショック直後は「百年に一度の大恐慌間違いなし」と力説する向きが横行したが、実際には普通の不況に終わった。それでも、「株価が下がる、景気が悪くなるという方向性は当たった」と反省のない専門家が少なくない。極論に惑わされ必要以上に生産をカットした製造業者は多々あったようで、恐慌論に迷惑した企業や家計は多かったのではないだろうか。 (宙蛸)昨年の宙と蛸編集長 谷川治生�副編集長 花岡 博�編集主幹 桑原 稔�記 者 吉田 豊/北山 桂� 冨所卓也/山際勝照� 江口珠里亜/武下 毅�制 作 蓑部節子/本田奈千�デザイン 立石麻美�編集補助 本多希代子�本誌掲載記事の無断転載・複写を禁じます��発行人 倉田 勲�発行所 社団法人 金融財政事情研究会�〒160-8519 東京都新宿区南元町19� 編集部 Tel 03(3355)1711� Fax 03(3357)7416� E-mail weekly@kinzai.or.jp� Web http://www.kinzai.or.jp/��販売(申込先)�株式会社 きんざい� 本 社 Tel 03(3358)0019� 大阪支社 Tel 06(6222)5291� 名古屋支社 Tel 052(211)1661� 福岡支社 Tel 092(761)1511��印刷所�文唱堂印刷株式会社 Printed in Japan■本号では、「集金代行ビジネス」という地味なテーマの特集を担当しました。面倒くさくて誰もやりたがらない業務のようですので、当該分野でノウハウとローコストオペレーションを確立したプレーヤーが出てくれば、国内の雇用増加にも一定の寄与が可能ではないかと思いました■それにしても、当該業務が正当なビジネスとしての社会的な評価を受けるためには、弁護士法の壁が厚いようです。民間プレーヤーの動向を探るために、いくつかのサービサーや人材派遣会社等に取材を申し込みましたが、断られることが多かったというのが実情です。弁護士法との関係から、痛くもない腹を探られたくないということかと推測しますが、周辺取材から業務を行っていることは明らかなのに、「当社は集金代行にはあまり興味がありませんので」などと答えられると、実は探られたくない「痛い腹」があるのかなどと邪推してしまいます■法律事務は弁護士の独占業務であり、債権回収業務は法律事務を含むために弁護士以外の者が行ってはならないとのことですが、弁護士は本当に多数の個人に対する数千円、数万円の回収業務を引き受けるのでしょうか。いくら弁護士の数が増えたとしても、彼らの主戦場は消費者金融会社などディープポケット(豊かな財布)の探索にとどまるような気がするのですが。(花岡)66金融財政事情2011.1.17

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